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奥秩父縦走 その2

奥秩父縦走 その2

シラビソの丸太と苔
シラビソの丸太と苔
樹林の中のテント場はとても落ち着く空間でした。
適度にお酒をいただいていたからか、テント内に入った直後から起きる時間までがほんとに一瞬。
良い眠りでした。

軽く朝食を済ませてテントをたたみ、4時過ぎに出発です。
 
day2
前国師からの日の出
前国師からの日の出

山ではこの時間が一番好きな時間。

日の出と日の入を山で迎えられるのが、山で寝泊まりする登山の一番いいところ。

前国師付近からの富士山
前国師付近からの富士山

心が洗われるような景色です。

国師ヶ岳の三角点
国師ヶ岳の三角点

国師ヶ岳にある三角点。一等です。

 

三角点にはそれぞれ山名とは別に名前がついています。

ここは「國師岳」。

国師ヶ岳の道標
国師ヶ岳の道標

道標の奥、淡い空に富士山が浮かんでいます。

 

ここ国師ヶ岳周辺が奥秩父山塊で最も標高の高いところ。

今回は最高峰の北奥千丈岳はパスです。

森に朝日差す
森に朝日差す

シラビソの森に陽が差してきました。

キソチドリ
朝日に輝く苔

苔が広がる森の中を進みます。

東梓
東梓
国師ヶ岳から甲武信ヶ岳の間は「山」や「岳」がつかない小ピークが続きます。

笹本稜平の小説『春を背負って』の中で梓小屋があったのはこの東梓付近です。
両門の頭から富士山
両門の頭から富士山
南側が突然開ける両門の頭。
果てしない山並みが広がります。
両門の頭から国師ヶ岳
両門の頭から国師ヶ岳
歩いて来た方向を見ると国師ヶ岳。
両門の頭から甲武信ヶ岳
両門の頭から甲武信ヶ岳
進む先には甲武信ヶ岳と木賊山が。
富士見
富士見
この富士見からは樹林に阻まれ富士山は見えません。
この名のついた時代には見えていたんでしょうね。
修験者の札と苔
修験者の札と苔
ここも好きな場所。
木との地際に置かれた修験者の札と見事な苔がとても良い雰囲気を出してます。
水師
水師
甲武信ヶ岳までの間で最後のピークとなる水師。
シャクナゲに囲まれた静かな場所です。
甲武信ヶ岳山頂
甲武信ヶ岳山頂
緩いアップダウンを繰り返して最後にグッと登ると甲武信ヶ岳に到着です。
あまりにも立派な山名を記した柱。

ここがどれだけ重要な山かは先に記した通り。

甲武信の名も甲州(山梨)、武州(埼玉)、信州(長野)の頭文字をとってのこととか。
ヒメシャジン
ミヤマシャジン?
甲武信ヶ岳直下にて。
萼にわずかに鋸歯があるのと、葉が極端に細いので確定が難しいけど、ミヤマシャジンか?
甲武信小屋
甲武信小屋
奥秩父で大弛小屋と並んで大好きな山小屋、甲武信小屋です。
この佇まいがthe山小屋。

玄関に顔見知りの小屋番さんが居られたので、ご挨拶と雑談。
今年は山小屋にとっても苦労と変化の年ですね。
すると「今日は徳さんもいますよ」とのこと。
小屋の外で作業をされていました。

以前小屋泊で来たときなどはよくストーブを囲んで焼酎をいただいたりしましたが、ここ数年はタイミング悪くなかなかお会いできず。久々にお会いできました。

テラスでこれからの山小屋の事、昔の甲武信小屋のこと、色々とお話してくれました。
甲武信の生き字引とも言える徳さんのお話は本当に興味深く、またその想いや経験は僕らガイドも知り、お客さんに伝えて行くのがひとつの使命だと思っています。

コーヒーをいただきながら一時間ほど居座ってしまいました。ごちそうさまでした。
ヤナギランの復活楽しみしています!

徳さんと小屋番さんにお礼を言って先に進みます。
賽の河原
賽の河原

甲武信小屋から進み少し下りにかかると突然こんな景色が。

沢からの風が起因で裸地化したであろうこの砂地は奥秩父の賽の河原です。


ちょうどガスって妙に雰囲気出してます。

賽の河原の先の立ち枯れ
賽の河原の先の立ち枯れ

ここはヌク沢の左俣からの風が更に分岐する支沢を通過して抜けるところ。

エゾシオガマ
笹平近くの立ち枯れ

笹平が近づくと小ピークの手前に立ち枯れが。

ここも上とおなじくヌク沢から吹き上がる風が起因でできた兄弟のような立ち枯れ。


立ち枯れ地帯があった場合は地形図を見てみると、沢筋が稜線に達するところ、つまり風の通り道になっていることが分かります。


また、そういう場所はほぼコル(鞍部)になっているのが地形のルール。

立ち枯れの足元には新たな息吹
立ち枯れの足元には新たな息吹
立ち枯れの足元に目をやると、新たな針葉樹がここぞとばかりに絶賛成長中です。

この木はトウヒですが、この辺りでは最終的にシラビソとコメツガが優勢になっています。
トウヒ
トウヒ
シラビソやコメツガに比べて葉の先が尖るトウヒ。

漢字だとトウは唐で、ヒは檜。

唐の時には、外来(外国)的なとか、妙な、という意味合いがあります。
笹平のダケカンバ
笹平のダケカンバ
ダケカンバにはパイオニア(先駆)的な性質があり、荒地に先んじて根付きます。

ここの場合は何かしらの理由で荒地化した場所にダケカンバが根付き、その後に笹が侵入してきたと思われます。

この状態になるとなかなか他の植物が割って入ることはできなくなり、一面笹になっています。
破風山避難小屋の集められたゴミ
破風山避難小屋の集められたゴミ
笹平には破風山避難小屋が建っています。

ここの小屋の裏手はビンや缶のゴミが散乱していていつも気になっていたのですが…。
なんとゴミの片付けが行われていました!

ゴミが捨てられていると、そこには更にゴミが集まってくる(捨てられる)ということもあります。
本当に素晴らしい活動だと思います。

小屋の横に集められたゴミ。
ビンや缶が主なので、少し昔の時代のゴミなのかな?と思われます。
ゴミがなくなった小屋の裏
ゴミがなくなった小屋の裏
ここに↑のゴミが散乱したいたのですが、とてもキレイになりました。
破風山避難小屋
破風山避難小屋
薪も積み上げられ内部もキレイで素晴らしい避難小屋です。

もしも避難小屋泊をするのであれば、当然ゴミのことや屎尿のことなどちゃんと理解ししっかりクリアできた状態ではじめてするべきです。

なにも考えずにタダだから。というのはNG。
ホツツジ
ホツツジ
破風山避難小屋から西破風山までの登りが西から東に奥秩父主脈を縦走する際のひとつの難関だと思います。
 
どこで切るか(泊まるか)にもよるけど大体疲れが出てくるのはこの辺り。更に段差の大きい急登です。

そんな急登の途中に可憐なホツツジ。

同じ雰囲気で雌しべが上には反り返るものはミヤマホツツジです。
西破風山
西破風山
西破風山についたー!道標あり過ぎ。

それぞれ微妙に山名が違う。
中ノ沢源頭部の立ち枯れ
中ノ沢源頭部の立ち枯れ
ここでも顕著な立ち枯れゾーンが。

奥の方を見るとなんとなく、立ち枯れ、樹林、立ち枯れ、樹林と交互になっているのが分かるかと思います。

細かな沢状地形、尾根状地形を可視化しています。
ハリブキ
ハリブキ
トゲトゲの木、ハリブキ。
ハリブキの葉の表
ハリブキの葉の表
葉の表のアップ。鋭い棘ですね。
ハリブキの葉の裏
ハリブキの葉の裏
なんと裏にも!
カラマツ
カラマツ
ここの立ち枯れゾーンにはカラマツや
コメツガ
コメツガ
コメツガがのびのびと成長中でした。

大人の木が立ち枯れて、陽が指すと下に控えていた若い木が急成長し、いつか立ち枯れが倒れてまた樹林に戻る。日差しが遮られれば、笹に変わって苔が入り苔の森になるかも知れません。

今の立ち枯れの姿は健全な自然のサイクルの一場面に過ぎません。
雁坂峠
雁坂峠
東破風山と雁坂嶺を越え、雁坂峠に着きました。

ここは道標にもある通り日本三大峠のひとつ。峠には歴史あり。文化ありです。
モコモコの苔
モコモコの苔
雁坂峠から次のピーク水晶山までは苔天国。

何に苔がついてるのかすらわからない濃さ。
キノコと苔
キノコと苔
パックマン型のきのこ、それに追われるコミヤマカタバミ(クローバーみたいな葉っぱ)。

苔が育む光景です。
曲がる苔
曲がる苔

すごい造形です。触るともふもふ。

オサバグサと苔
オサバグサと苔
多彩な種類の苔の中にオサバグサの葉。

またこの花が咲く時期にも歩いてみたいです。
倒木に地衣類と苔
倒木に地衣類と苔
これは倒木ベースでしょうが、なんか動き出しそうな。頭には地衣類が群がってます。
低い笹の気持ちの良いトレイル
低い笹の気持ちの良いトレイル
ここは水晶山、古礼山、燕山と奥秩父の中堅どころ3座が連続するとても気持ちの良い区間です。踏み跡も薄めで良い感じ。

とくに古礼山の山頂からの富士山の展望と笹っ原の気持ち良さは奥秩父で一番ロングトレイル感を出しています。
古礼山には巻道もあるけど疲れていても毎回山頂を踏んでしまいます。

この日は雲が湧いて残念ながら古礼山から富士山は見えませんでした。
燕山
燕山
地味めな燕山山頂。倒木で少し道が着け変わっていました。
笠取山
笠取山
木の間からきれいな笠形の笠取山が見えました。

今日はもういい時間なので笠取小屋での幕営に決定。
ノアザミ
ノアザミ
燕山と笠取山のあいだには雁峠(がんとうげ)があります。

雁峠の燕山側の斜面は展望よし花よしでお気に入りの場所。

鮮やかなノアザミ。
コウリンカ
コウリンカ
光輪花または紅輪花。

輪状に広がる光か、はたまた紅い車輪か。

どっち?
ワチガイソウ?
ワチガイソウ?
いまは8月、ワチガイソウって咲いてるもんなのかな?

違うとするとなんの花だか分かりません。
ハナイカリ
ハナイカリ
爽やかな色彩のハナイカリ。

名前の通り、碇ですね。
雁峠
雁峠
雁峠。現在は北(埼玉県)側の道は廃道で峠の体を成してはいません。

かつてはここをたくさんの人や牛馬や物資が往来したんでしょうね。

気持ち良すぎてここに泊まってしまいたい気分ですが、水がもう無いので無理。

※テント泊指定地以外でのテント泊は禁止です。
マルバダケブキ
マルバダケブキ

雁峠から笠取山方面の短い登りに取り付くと…


ドドドドドドドドドッ!!!


大量の(本当に大量の)シカが左から右に駆け抜けていきます。


あまりの数にしばらく呆然としてしまいました。


そんなシカの生息地で悠々と生き残れるのはこの花、マルバダケダケブキぐらいのものです。

マルバダケブキ群落
マルバダケブキ群落
雁峠分岐から一時主脈を離れて笠取小屋へ。

水量豊富な冷たい水場を想像してしまったらここを通過して先に進む気は起きません。
今日も暑かった。

雁峠分岐(笠取山と雁峠の分岐)の周辺はマルバダケブキがどっさり。


今日も一日快適に歩けました。
やっぱり奥秩父主脈は素晴らしい道です。
以前より少しフィールドを広げた自分の感覚が、昔と変わっていなかったことがなんとなく嬉しい。
甲武信小屋での一時も素晴らしい時間でした。

奥秩父の山と道と人に感謝。