奥秩父縦走 その2
樹林の中のテント場はとても落ち着く空間でした。
適度にお酒をいただいていたからか、テント内に入った直後から起きる時間までがほんとに一瞬。
良い眠りでした。
軽く朝食を済ませてテントをたたみ、4時過ぎに出発です。
day2

緩いアップダウンを繰り返して最後にグッと登ると甲武信ヶ岳に到着です。
あまりにも立派な山名を記した柱。
ここがどれだけ重要な山かは先に記した通り。
甲武信の名も甲州(山梨)、武州(埼玉)、信州(長野)の頭文字をとってのこととか。

奥秩父で大弛小屋と並んで大好きな山小屋、甲武信小屋です。
この佇まいがthe山小屋。
玄関に顔見知りの小屋番さんが居られたので、ご挨拶と雑談。
今年は山小屋にとっても苦労と変化の年ですね。
すると「今日は徳さんもいますよ」とのこと。
小屋の外で作業をされていました。
以前小屋泊で来たときなどはよくストーブを囲んで焼酎をいただいたりしましたが、ここ数年はタイミング悪くなかなかお会いできず。久々にお会いできました。
テラスでこれからの山小屋の事、昔の甲武信小屋のこと、色々とお話してくれました。
甲武信の生き字引とも言える徳さんのお話は本当に興味深く、またその想いや経験は僕らガイドも知り、お客さんに伝えて行くのがひとつの使命だと思っています。
コーヒーをいただきながら一時間ほど居座ってしまいました。ごちそうさまでした。
ヤナギランの復活楽しみしています!
徳さんと小屋番さんにお礼を言って先に進みます。

笹平が近づくと小ピークの手前に立ち枯れが。
ここも上とおなじくヌク沢から吹き上がる風が起因でできた兄弟のような立ち枯れ。
立ち枯れ地帯があった場合は地形図を見てみると、沢筋が稜線に達するところ、つまり風の通り道になっていることが分かります。
また、そういう場所はほぼコル(鞍部)になっているのが地形のルール。

ダケカンバにはパイオニア(先駆)的な性質があり、荒地に先んじて根付きます。
ここの場合は何かしらの理由で荒地化した場所にダケカンバが根付き、その後に笹が侵入してきたと思われます。
この状態になるとなかなか他の植物が割って入ることはできなくなり、一面笹になっています。

笹平には破風山避難小屋が建っています。
ここの小屋の裏手はビンや缶のゴミが散乱していていつも気になっていたのですが…。
なんとゴミの片付けが行われていました!
ゴミが捨てられていると、そこには更にゴミが集まってくる(捨てられる)ということもあります。
本当に素晴らしい活動だと思います。
小屋の横に集められたゴミ。
ビンや缶が主なので、少し昔の時代のゴミなのかな?と思われます。

薪も積み上げられ内部もキレイで素晴らしい避難小屋です。
もしも避難小屋泊をするのであれば、当然ゴミのことや屎尿のことなどちゃんと理解ししっかりクリアできた状態ではじめてするべきです。
なにも考えずにタダだから。というのはNG。

破風山避難小屋から西破風山までの登りが西から東に奥秩父主脈を縦走する際のひとつの難関だと思います。
どこで切るか(泊まるか)にもよるけど大体疲れが出てくるのはこの辺り。更に段差の大きい急登です。
そんな急登の途中に可憐なホツツジ。
同じ雰囲気で雌しべが上には反り返るものはミヤマホツツジです。

ここでも顕著な立ち枯れゾーンが。
奥の方を見るとなんとなく、立ち枯れ、樹林、立ち枯れ、樹林と交互になっているのが分かるかと思います。
細かな沢状地形、尾根状地形を可視化しています。

コメツガがのびのびと成長中でした。
大人の木が立ち枯れて、陽が指すと下に控えていた若い木が急成長し、いつか立ち枯れが倒れてまた樹林に戻る。日差しが遮られれば、笹に変わって苔が入り苔の森になるかも知れません。
今の立ち枯れの姿は健全な自然のサイクルの一場面に過ぎません。

ここは水晶山、古礼山、燕山と奥秩父の中堅どころ3座が連続するとても気持ちの良い区間です。踏み跡も薄めで良い感じ。
とくに古礼山の山頂からの富士山の展望と笹っ原の気持ち良さは奥秩父で一番ロングトレイル感を出しています。
古礼山には巻道もあるけど疲れていても毎回山頂を踏んでしまいます。
この日は雲が湧いて残念ながら古礼山から富士山は見えませんでした。

雁峠。現在は北(埼玉県)側の道は廃道で峠の体を成してはいません。
かつてはここをたくさんの人や牛馬や物資が往来したんでしょうね。
気持ち良すぎてここに泊まってしまいたい気分ですが、水がもう無いので無理。
※テント泊指定地以外でのテント泊は禁止です。

雁峠から笠取山方面の短い登りに取り付くと…
ドドドドドドドドドッ!!!
大量の(本当に大量の)シカが左から右に駆け抜けていきます。
あまりの数にしばらく呆然としてしまいました。
そんなシカの生息地で悠々と生き残れるのはこの花、マルバダケダケブキぐらいのものです。