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ガイド再開!【岩手県4座トレーニング山行】その3

ガイド再開!【岩手県4座トレーニング山行】その3

薬師岳 オオカメノキの葉
薬師岳 オオカメノキの葉

day2の続き 薬師岳

 

早池峰山の蛇紋岩をなんなく下り切り無事に小田越に戻ってきました。

正面には薬師岳の登山道入り口が待っています。

 

お昼前で雨もまだ降ってないのでベンチで休憩。

 

「これから雨ですねー薬師岳どうしま…」「行きます!」

即答でしたね。

 

ということで薬師岳登山開始です!

薬師岳登山口
薬師岳登山口

木道でスタート。滑らないように注意。

熊除けの一斗缶
熊除けの一斗缶

もうボコボコのクマよけの一斗缶を見送り、苔がきれいな登山道を着実に登っていくと…

雨に濡れた緑
雨に濡れた緑

シダやマイヅルソウやコミヤマカタバミの葉と苔の様々な緑が輝きを増します。

 

いよいよ雨が降ってきました。

このまま薬師岳を山頂まで登ると今日の累積標高差が1300mを超えます。

久々の登山でこの行程、遅くとも下りで疲れがでてくることは想像できます。

ここは残りの体力を極力減らさないようにペースの配分をします。

 

また、予報ではしばらく雨は降り続きますが、まだまだ行動時間には十分なゆとりがあります。

ペースをあげて雨に降られる時間を短くするのではなく、しっかり雨に備えたうえでゆっくり登り、丁寧に下る。これが正解です。

急いだせいで転んで骨折やねん挫で歩けなくなることを考えたら、雨に降られることなど小さなことでしょう。

  

早池峰山同様に薬師岳でも上部で森林限界から出るので、そこまでの樹林で汗や雨での過度な濡れはNG。

樹林内は風も無く、どうしても蒸れますがレインウェアは着たまま行動します。

長い休憩は取らず短い休憩を「まだ少し早くないかな?」ぐらいのピッチで取っていきます。

水分もその都度必ず摂ってもらいます。

 

苔がきれいな登山道を着実に登っていくと…

オサバグサ
オサバグサ

オサバグサが出てきました、どんどん数が増えてしだいに道の両脇が群落に!

※写真を撮るのが難しい花です…

 

オサバグサは大好きな花です、オサバグサ自体というよりもオサバグサの咲く環境が好きなんですよね。

緑がとにかく濃くて。

 

今日は雨なので更に濃さが増してます。

イソツツジ
イソツツジ

登山口から標高差300mほど登ると森林限界を越して高山帯に出ます。

 

高山帯に出るとイソツツジがみごとに咲いていました。

薬師岳山頂
薬師岳山頂

マイヅルソウ、イワウメ、コケモモ、イワヒゲなどの小さな花々が咲く道を進むと山頂に到達です。本日2座目、薬師岳登頂!

 

高山帯に出ても風が弱くて助かりました。

 

ここから望む早池峰山が立派らしいのですが、きょうは真っ白で残念。

 

帰りも花を見ながらゆっくり戻ります。

コケモモ
コケモモ

5ミリぐらいの小さな花です。

コケモモは小低木、草花ではなく木です。

 

赤い実は食用で、リンゴンベリーというのはコケモモのことです。

イワウメ
イワウメ

これも小低木。名前とおり岩に張り付いています。

岩に咲く梅ということでしょう。

イワヒゲ
イワヒゲ

これも岩に張り付いた花。葉が髭状なのでイワヒゲなのでしょうか。

 

高山の小さな小さな木の花三種でした。

 

往路を慎重に戻ります。

すぐ隣ですがこちらの山は蛇紋岩ではなく花崗岩なので滑りやすさは早池峰山とは全然違います。

ですが大きな岩、大きな段差が多く疲れた体にややしんどい下りです。

 

木の根や岩に足をとられないように気を付けながら、無事に小田越まで下りました。

山と高原地図のコースタイム+20分ほどかかりましたが、全然問題ありません。

安全が最優先、無駄に焦らないこと、気持ちにゆとりを持つことが登山ではなによりも重要です。

 

ここからは安全な車道を河原の坊まで歩き、トレーニング山行2日目も無事終了です。

 

day3 焼石岳

 

今回のトレーニング山行の最終日。

 

今日登るのは奥羽山脈中部の山、焼石岳です。

登山口と山頂の標高差は1,100m、つぶ沼登山口からの往復コース。

連日の疲労も込みで休憩を含めた行動時間を9時間半として計画しました。

焼石岳 つぶ沼コース登山口
焼石岳 つぶ沼コース登山口

大きな看板で分かりやすい登山口。

ここの標高は450m。

気温も高く、昨日と違ってムシムシとした感じです。

 

で、今日もまた雨…トレーニングとはいえちょっと残念です。

さほど強まりはしないものの、一日雨予報なのでやっぱり雨具着用。

標高も低いので、ちょっとオーバーペースになればあっという間に汗がでます。

 

昨日の薬師岳同様に、こまめな休憩をとりつつゆっくり進みます。

早朝スタートで今日も時間的なゆとりは十分。

 

一昨日の兜明神岳、昨日の早池峰&薬師とも違い、今日のコースはりっぱなブナ林がある山です。

ここ(奥羽山脈中部)と早池峰山がある北上山地では積雪量も違うので植生も違ってきます。

 

こうも毎日毎日おもむきが違う山を歩けるというのは面白い山旅です。ブナ林を歩きながら改めて良い計画だと感じました。

金山沢
金山沢

緑の森を進むとしだいに弱い霧雨になり雨が上がりました。

とにかく蒸れて暑いので雨具を脱ぎます。 

 

 

流れる水音が涼しげな金山沢に到着。沢を渡ったところで休憩、冷たい水で顔や腕を冷やします。

 

しばらく休憩していると……蚊がどんどん集まってきます!

 

これはこれでキツイ。

あんまり落ち着いて休めませんので、早々に出発。

すると、

金山沢 日差しが!
金山沢 日差しが!

なんと日が差してきました!

 

昨日は終日ガスガスだったので明るい空が久しぶりです。

 

気温があがってきてなんか嫌な予感。

石沼
石沼

石沼に到着。とてもきれいな色をしています。

 

予感的中で大量の蚊に囲まれながらの登山になりました。

虫よけもあまり効きません…。

 

雨があがったのはうれしいけど、どっちが良いのか?

これもトレーニングですね。

石沼から緩いアップダウンを進むとつぶ沼分岐と呼ばれる分岐点へ、ここは遅くまで雪が残る地形でまだまだしっかり残雪がありました、雪が消えたところにはミズバショウとリュウキンカがたくさん咲いています。

 

そしてここからだんだんと花が出てきます。

ムラサキヤシオ
ムラサキヤシオ

名前は紫というけどピンクっぽい

スミレサイシン
スミレサイシン

こちらが正真正銘の紫

シナノキンバイ
シナノキンバイ

ちょっと濃い黄色

ハクサンチドリ
ハクサンチドリ

色とりどりです。

 

他にも

タニウツギ

ミツバオウレン

ツクバネソウ

ミツガシワ

ミヤマキンポウゲ

イワイチョウ

などなど。

銀明水
銀明水

銀明水では冷たい水が出ていました。

銀明水のひしゃく撤去
銀明水のひしゃく撤去

山の水場でコップとかひしゃくなどが置いてあることが多いですが、今後はこの対応が基本でしょうね。

今後水を取る前提であればコップを持ち歩くとよいでしょう。

水筒だけではとても汲みづらい水場ってよくありますし。

 

 

ベンチもあるので、ここでしっかり休みます。

 

基本的に雨は止みましたが、たまにパラパラと降ってきます。

人にもよりますが、僕の場合は汗の方が嫌なのでそんな感じのときは大抵雨具を着ないで歩きます。

 

焼石岳 雪渓
焼石岳 雪渓

銀明水を後にするとすぐに雪渓が出てきました。

けっこう表面が固くてふわっと足を置くと滑ります。

登山靴のエッジを使って軽く蹴り込みながら一歩進んだら安定することを確かめてからはじめて次の一歩を出す。時間はかかってもそうして進みます。

 

写真は二つ目に出てきた本日一番大きな雪渓です。

ミヤマツボスミレ
ミヤマツボスミレ

雪渓の縁にミヤマツボスミレが咲いていました。

紫ともピンクとも言えないような絶妙な色合いです。

ヒナザクラ
ヒナザクラ

雪渓の融けたばかりの跡にはヒナザクラが。

これは東北地方にのみ咲く花で、そっくりな早池峰山のヒメコザクラはこれの近縁種です。

この種で最も有名なのはハクサンコザクラでしょうか。

 

ヒナザクラは亜高山帯の湿った草地に咲く雪田系の花で、ヒメコザクラは高山帯の砂礫地や岩場に咲くという分布の違いがあります。

 

簡単に言うと、これっぽいのが早池峰山にあったらヒメコザクラです。

シラネアオイ
シラネアオイ

1科1属1種と言われるなぜか生き残った花、シラネアオイ。

仲間の種はもうこの世になく全滅してしまっています。

 

いくつかの都道府県で絶滅危惧の指定を受けていますが、岩手県は指定されていません。

 

見事な株がこれでもか!というくらいたくさんありました。

オオバキスミレ
オオバキスミレ

とても鮮やかな黄色です。

同じく黄色のスミレ、キバナノコマノツメも咲いていました。

 

このスミレを見た直後に急に道が途切れて、そのまま進むと横を流れる沢に降りてしまいます。

地形図を見るとまっすぐ沢沿いを進むんだけど、急に沢に入るのもちょっと?だし…今までわりと頻繁にあったテープ(目印)もなく…。

とりあえず偵察に沢の中に入って飛び石で進み、5mほどの岩場を登るとその先でピンクテープを付けた鉄筋が雪解けで倒れていました。

この時期は雪渓が日々融けていくので、目印をだけを頼りに歩くといつの間にか違う方へ進んでしまう恐れもあります。

 

地図読みの基本は抑えておきたいですね。

コバイケイソウ
コバイケイソウ

コバイケイソウも満開状態で咲いています。

 

勾配がだいぶ緩くなり、湿原(雪田草原)が度々現れます。

湿原にはヒナザクラがもれなく群生していて良い雰囲気です。

 

歩いている時間的にもそろそろ山頂に近づいてきたような感じですが、また雨が降り出してすぐ近くの山は時折見えてもなかなか焼石岳山頂は姿が見えません。

 

相変わらず初お目見えの花がどんどん出てきます。

オノエラン
オノエラン
ウラジロヨウラク
ウラジロヨウラク
サラサドウダン
サラサドウダン

他にも

チングルマ

ミヤマダイコンソウ

ミネウスユキソウ

ゴゼンタチバナ

アカモノ

ミヤマシオガマ

ミヤマキンバイ

ヒオウギアヤメ

ウサギギク

などの花が見れました。

姥石平
姥石平

姥石平に到着。

 

この辺りで有名ハクサンイチゲはタイミング的にそれほど咲いていませんでしたが、いろいろな花が咲いていました。

 

本当はこの写真の奥にハクサンイチゲが大群落をつくるという言う東焼石岳が見えているはずですが、真っ白です。

 

さぁいよいよここからあと20分ほどで山頂です!

正直ここまでこんなに順調に来れるとは思っていませんでした。

山頂への最後の登りにかかると西からの風をまともに受けるので一気に雨が叩きつけてきます。

 

苦しいですが、ここは頑張りどころです!

焼石岳山頂
焼石岳山頂

 

強風に耐えて登り切りました!登頂です!

 

360°の雄大な展望の山ですが、360°真っ白です。

体も冷えるのでものの数秒で来た道を戻ります。

 

ここまでおよそ5時間半、山と高原地図のコースタイムで4時間20分(休憩含まず)なので、連日で3日目の登山と考えるととても良いペースです。

 

これであれば目標の縦走は予定通り実施できそうです。

素晴らしい!

ただし、今日の登山はまだまだ続きます。

山頂はようやく半分の通過点であり最後まで気を抜いてはいけません。

ここから気を抜かず最後まで集中して歩ききることもトレーニングのうちです。

 

道がよく分かっている安全な所ではたまにお客さんに前を歩いてもらいます。

お客さんに前を歩いてもらうと歩行時の癖がすぐに分かります。姿勢とか足さばきとか。

岩がゴロゴロしている下りがどうも苦手なようなので、いろいろとレクチャーしながら下っていきます。

どうして躓くか、どうして置いた足が滑ってしまうのか、などなど。

細かな改善点が見つかりました。ご自身ではなかなか気づかない癖もありますのでこれも収穫です。

 

雪渓も慎重に通過し、銀明水避難小屋でお昼休憩をしっかりとって、さぁあとは2時間半ほど。

ここまでもいろいろレクチャーしながらにしては良いペースで歩けています。

サンカヨウ
サンカヨウ

往路では気がつかなかったサンカヨウ。

雨に濡れるとこのように花弁が透きとおって見えます。

 

つぶ沼分岐まで戻ってきました。

 

あとは比較的勾配も緩い下りを延々と進むだけなんですが…この辺りから少しペースが落ちはじめました。

それはそうです。

久々の登山で3日目、しかも前日も10時間近く動いているわけですから。ここまでが上出来すぎました。

でも休憩ごとにしっかり行動食を摂り水分補給をしているので、そこまで心配はしていません。

食べることができているというのは安心できる要素です。

 

あとは休憩を取りつつ集中してゆっくりと歩みを進めることにしましょう。

集中を切らさない気持ちの強さ「気力」も試されます、きつい縦走であれば必ずこのような場面が出てくるはず!

 

 

銀明水避難小屋から3時間、無事にスタート地点のつぶ沼登山口に下山しました!

少し予定をオーバーしましたが、これで3日間のトレーニング山行の全行程を歩き通しました。ほんとうによく頑張りました。

 

今回の山行で山を歩く感覚はほぼ戻ったと思います、

目標の「折立~薬師岳~五色ヶ原~室堂~称名滝縦走」に向けて、

戻った感覚を保てるよう近場の山などでトレーニングをしていただければと思います。

 

3日間ほんとうにおつかれさまでした!